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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)52号 判決

原告が主張する審決取決事由の存否について検討する。

1 要旨認定について

原告は、特許請求の範囲における第三の要件により、溶着部分の強度が全体的に均一で且つ高いこと及び大量生産ができ、しかも安価になるという目的を達成できるから、前記第三の要件は、第一、第二の要件による物の発明である溶着箱を更に限定しているものであり、従つてこの第三の要件は本願発明の構成要件として必須であり、これを除外して要旨を認定したのは誤りであると主張する。

成立に争いのない甲第二号証、第三号証及び弁論の全趣旨によればつぎの事実が認められる。すなわち、出願当初、本願発明の溶着箱は、第一及び第二の要件をその構成として具備したものであるところ、昭和五五年九月一六日付手続補正書により、第三の要件が特許請求の範囲に加えられたが、第一及び第二の要件を構成要件として具備する融着箱の製作にあたつては、V字溝3の溶融面と接合面4の溶融切口の形成と、側面部2と底面部1との折曲部の溶着と接合面4の溶融面同志の溶着の仕方として、(イ)同時溶融と同時溶着、(ロ)同時溶融と異時溶着、(ハ)異時溶融と同時溶着、(ニ)異時溶融と異時溶着の四方法が考えられるので、右第三の要件はその(イ)の製作手段によつたものに限定され、公告時の特許請求の範囲が、形式的には一応減縮されたものといえる。

第三の要件の補正に対応する明細書の記載としては、前掲甲第三号証によると、「上記のV字溝3の溶融面と上記の接合面4の溶融切口は同時に形成したものであり、且つ側面部2と底面部1との折曲部の溶着と接合面4の溶融面同志の溶着は同時に行つたものである第一図及び第三図の如き熱可塑性プラスチツク又はその発泡体製の多角形溶着箱である。」とされる外、同時溶融については「まず、第五図ないし第七図の金型B、すなわち、中央の多角形突起条6とその各辺の頂点部8に設置した二本一組の側面突起条7からなり、側面突起条7は多角形突起条6より突起して二つの突起条の間に突起差がある形状であり、各突起条には加熱装置9を付設してなる多角形溶着箱を成形するための金型Bであり、該金型Bを加熱して、その多角形突起条6の部分で平板をV字溝3に溶解し、同じく側面突起条7の部分で接合面4に溶断して、第二図の如く平板を底面部1と側面部2に区分して溶融した平板5、すなわち、溶融平板を作る。」「次に、該溶融平板ができるとその溶融面(V字溝3の溶解面及び接合面4の溶断面)が硬化する前に、各側面部2を起立させて折り曲げるだけで、底面部1と各側面部2とを結ぶV字溝3の溶解面同志、及び、各側面部2端部の隣接する接合面4の溶断面同志が相互にそれぞれ密接され、それ等の密接による溶着で成形(製箱)されたものである。」「第二図又は第四図のような溶融平板ができると、各溶融面が硬化する前に素早く各側面部2は折曲げられ、折曲げの結果として、各溶融面はそれぞれ密接され、更に密接の結果として、各密接部は溶着されることになる。」とあるだけであつて、同時溶融、同時溶着の際の温度、溶着部の構造、硬化にいたるまでの時間等の条件については何ら触れることがなく、「その溶着強度も優れており、更に、密接部(コーナ部や折曲部)を固定するために、他の一切の接合材(例えばホツチキス、接着剤等)を使用することなく、ただ密接した溶融面同志の硬化を待つだけで溶着箱は完成する。」との記載も、ホツチキスや接着剤等の接合材によつて接合された在来の箱と溶着により接合された箱の接合強度の差を一般的に説明したに過ぎず、従つて、同時溶融、同時溶着による溶着部の具体的構造、その強度の均一性の内容について何ら特定、開示するところがないといわざるをえず、また大量生産ができ、しかも安価となるという効果は、まさに製造方法の効果であるから、第三の要件は、単に溶着箱の製作手段を限定したものに過ぎず、たかだか溶着部の構成について単なる希望条件を述べたにとどまり、溶着箱自体の構成要件の限定ということはできない。

そうすると、審決が本願発明の要旨認定にあたり、第三の要件を製造方法の記載であるとして、これを除外して認定した点に誤りはない。

2 進歩性の判断について

原告は、特許請求の範囲における第三の要件が本願発明の要旨に含まれることを前提として、審決の進歩性判断の誤りを主張するところ、その前提を採用することができないことは、前記認定のとおりであるから、その余の判断に及ぶまでもなく、この点に関する原告の主張は採用することができない。

そうして、成立に争いのない甲第四号証、第六号証によれば、審決認定のとおりの要件からなる本願発明の溶着箱は、審決認定のとおり第一引用例及び第三引用例に記載されたものから容易に発明することができたものと認められるから、審決には何ら違法の点はない。

そうすると、本件審決を違法としてその取消を求める原告の本訴請求は、失当として棄却すべきものである。

〔編註〕 本願発明の特許請求の範囲は左のとおりである。

多角形箱の側面部2と底面部1との折曲部は、側面部2を起立させて折曲げることによつて平板5を溶融してできたV字溝3の溶融面同志を密接するだけで溶着したものであり(以下「第一の要件」という。)、更に箱の側面部2端部からなるコーナ部は、同じく側面部2を起立させて折曲げることによつて側面部2端部の溶融切口である隣接する二つの接合面4の溶融面同志を密接させるだけで溶着したものであり(以下「第二の要件」という。)、上記のV字溝3の溶融面と上記の接合面4の溶融切口は、同時に形成したものであり、且つ側面部2と底面部1との折曲部の溶着と接合面4の溶融面同志の溶着は同時に行つたものである(以下「第三の要件」という。)熱可塑性プラスチツク又はその発泡体製の多角形溶着箱。

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